Dvorak配列

Dvorak配列というのはキーボードの配列の一種で、最大の特徴は母音が左手ホームポジションに集中しているという点にある。最も一般的なキーボード配列であるQwertyで言えばASDFGに相当するキーがAOEUIに割り当てられている。AIUEOじゃないのは考えたのが日本人じゃないからだろう。子音のキーについては使用頻度と入力効率を考慮して配置されているらしい。ただし効率といっても英語圏での使用効率だし、それが入力スピードの向上につながるかどうかという点については、信用に足る判断材料を知らない。


そもそもDvorak配列の説明に必ず登場する「タイプライターの時代にハンマーが絡まらないよう、わざと非効率にするように作られたのがQwerty配列だ」という都市伝説を広めたのはDvorak配列の発明者らしいのだ(これ自体が都市伝説かもしれない)。俺はDvorakに変えて数年になるが、Qwertyより速く打てるという実感は正直言ってまったくないし、Qwertyより合理的な配列だと思ったこともない。PFU Happy Hacking Keyboard Professional2 墨/無刻印 英語配列 USBキーボード 静電容量無接点 UNIX配列 WINDOWS/MAC両対応 ブラック PD-KB400BN強いてDvorak配列を使うメリットを挙げるとするならば「とりあえず打ちやすい」「珍しい」の2つだろう、主に後者だ。「私って変わってるって言われるの」とか言ってる不思議ちゃん(絶滅種)と同じだ。俺の場合これに加えて「キートップに刻印がないキーボードを買った」という理由を挙げておきたい。せっかく文字が書いていないんだから、タッチタイピングしがいのあるように新しいキー配列を覚えようと思ったのだ。ピアノを弾いているかのような(弾けないけど)打鍵感を持つこのキーボードに慣れると、キートップに文字の書いてあるキーボードなんか「鍵盤にドレミを書かれてしまったカシオトーン」にしか見えない。


ここまで読んでDvorakを試してみようと思う人がどれほどいるか分からないが、WindowsMacOSの場合は、ともにOSでサポートしているので、Dvorakを試すことは比較的簡単だ(他のOSについてはよく分からない)。もちろんキートップQwertyのままなのでタッチタイピングが前提となる。


Windows
コントロールパネル→地域と言語のオプション→言語→詳細→追加


MakOS
システム環境設定→言語とテキスト→入力ソース


ただし、Windowsの場合にはOSの機能だけではアルファベットの入力までしかできない。MS-IMEATOKGoogle日本語入力もキーボード配列の変更をサポートしていないからだ。ちょっと面倒な話をするとWindowsはキーボードレイアウトと日本語入力が並列に扱われていて「キーボードレイアウトはDvorak + 日本語入力システムはATOK」といった選択ができる構造になっていないようなのだ。MacOSの場合はキーボードドライバと日本語入力が独立しているのか、ATOKことえりでは、各々の環境設定からキーボード配列の選択ができるし、Google日本語入力では指定はできないもののメインのキーボードレイアウトに従うようになっている。


だったら、WindowsではDvorak配列で日本語入力は使えないのかと言うとそんなことはなく、親切な人たちが便利な常駐ソフトを用意してくれている。常駐型のDvorak変換ソフトはキーボードドライバを変更することなくキー入力を騙して別のキーに変換することで、Dvorak配列を実現している。他にもATOK等のローマ字変換テーブルを書き換えたり、もっとローレベルからキーテーブルをレジストリを書き換えてDvorak配列を実現するという力技もあるにはある。俺の場合、Windowsでは、Dvorakerという500円のシェアウェア(機能が制限された無料版もあり)を使っている。このソフトはDvorakへの変換はもちろん、カ行の使用頻度が多い日本語にあわせて「c」のキーでカ行が入力できたり、複合母音を1つのキーに割り当てたりすることができる。加えて、CtrlやAltが押されている場合にはDvorakではなくQwerty配列になるという嬉しいオプションもある。この機能の存在は意外に思われるかもしれないが、生まれた時からDvorakであるならともかく、何十年もQwertyで使っているコピーペーストまでDvorakに変えるというのはなかなか難しいのだ。だいいちCtrl+X,C,Vは横に並んでいなければ意味がないだろう。MacOSの場合は気が利いていて、OSレベルで「Dvorak
Qwerty」という配列が提供されている。これを選べばコマンド/オプション/コントロールキーが押されている場合にはQwerty配列になる。


と前置きが長くなってしまったが、まとめると

日本語入力を含む文字入力をDvorak配列を使いたい、でもショートカット操作はQwertyで行いたいという人は…
Windowsの場合は常駐ソフトが必要
MacOSの場合はOS標準でOK

ということになる。


ただWindowsの場合、最近少し事情が変わってきた。ひとつはOSのバージョンアップと64bit化により、Dvorakerが効かないケースが増えてきたこと、もうひとつはFireFoxやMS-Officeのようにキー制御を独自に行うため、Dvorakerがあるとキー入力がおかしくなるアプリケーションが増えてきたことだ(後者については、MacOSでもAdobeの一部のソフトで同様の現象を確認している)。特にFireFoxは以前から一部のキーがDvorakerを使っていると入力不能になっていたのだが(これが残念なことに一部のキーというのが"@"や":"だったりする)、ver.3.6になってから、Dvorakerのオンオフや日本語入力のオンオフに関係なく、強制的にQwerty配列でしか入力されなくなってしまった。ユーザのキー操作を記録しているのかもしれない。


しばらくは一部のソフトの不自由に目をつぶりつつ使うことになるのだが、この先、不自由は拡大していく事が予想される。対抗策としては、次の3つを検討している。
1. Qwertyに戻る。
2. Dvoraker以外の方法を模索する。
3. 勤め先でもMacをメインにする。
たぶん2は無理ぽいので、1か3だが、3はしばらくリース機材の更新がないのでいつになるか解らない。したがって、今のうちからQwertyに戻る覚悟を決めておく必要がありそうだ。ただ、MacOSではこの先もDvorakの利用に困ることはなさそうなので、WindowsではQwertyMacOSではDvorakと使い分けることになるだろう。なんだか父親とは英語で母親とは日本語で話す帰国子女みたいだ。FMでレギュラー番組が持てるかもしれない。